「すげー迷ったけど…、お前に渡しておく」

そう言って、タケルは私に何かを投げて寄越した。

チャリ…。
手の中で金属音が鳴る。

ゆっくり手を開くと、そこにはシルバーのネックレスがあった。

「何、これ…」

言いかけて私は止まる。

見覚えのあるハート型のトップ。
嵌め込まれたピンクの石。

「これって…」

「事故に遭ったときに秀平が持ってたんだって。
どうせお前に渡すつもりだったんだろ?」

あの日は実果の誕生日だったし、とタケルが続けた。

そうだ。
はっきりと思い出した。

雑誌に載っていたこのネックレスを、私は秀平の見てる側で欲しがったんだ。

脳裏にあの日が蘇る。

少し散らかったタケルの部屋。
響くゲームの電子音。
そして、初めてのキス…。

「あいつ、これを落として横断歩道で立ち止まったらしいんだ。
そこにスピード出し過ぎた車が突っ込んで来て…」