恋する手のひら

「お前を責めてるわけじゃない」

秀平は私の顔にそっと手を伸ばすと、いつの間にかに頬を伝っていた涙を拭いてくれる。

「全部俺のせいだから」

秀平は困ったように笑う。

「お前のこと忘れた俺が悪いんだよ」

私は首を振る。
秀平のせいじゃないと否定したいのに、胸がつまって声にならない。

「希美と寄りを戻したりして無神経だった。
傷付けたよな、ごめん」

私は首を振りながら、秀平の手にそっと自分の手を重ねる。
ずっと欲しかった温もりに、すごく緊張してる。

聞きたいのは謝る言葉なんかじゃない。
知りたいのは、今秀平が私をどう思っているかだけ。

希美ちゃんと別れたのは、私のことを思い出したからだって自惚れてもいい?

さっき控え室で、「お前がタケルの彼女じゃなかったらいいのに」って言ったのも、弱ってたからじゃなくて、本心だと思っていいの?

もしそうなら───。

そのとき、秀平は急に視線をタケルに移した。

「タケルを選んだお前は正しいよ」

秀平ははっきり言った。

「もう俺のことは気にするな」

私はなんて酷い人間なんだろう。
秀平に名前を出されて初めて、タケルのことを思い出した。

ついこの前、大切な人だと再確認したはずなのに。