とっさに、優子を抱えて後ろからくる何かをよけた。
ブンッ
と、空気を引き裂く音が頭のすぐ後ろで響く。
一瞬にして、背筋が凍る。
後ろを振り向くと、ニット帽を被った、鋭い目つきの男がバットを持っていた。
生気のない顔は、不気味であり恐怖をも感じさせる。
それに、ニット帽によりうまく見えないがどこかで見たことのあるような気がした。
「あの人…っ」
腕の中で、優子がガタガタと震え、顔を青くしながら呟く。
優子の態度からして、コイツが優子の後ろをつけていた男であろう。
俺は足に、ぐっと力を入れると立ち上がる。
「てめぇか、ストーカー野郎は」
沸々と怒りが込み上げる。
「……」
「なんとか言えよ」
目の前のストーカーは、ただ俺を見つめる。

