誘惑Baby


「っ…ばか…、…」


声にならず、ただ強く強く抱きしめた。



怖かった。
怖かったんだ。

君になにかあったらと、考えただけで気が狂いそうなほど…怖かった。


同時に、守りたい人だから、守ってあげたい人だから、自分の無力さに絶望を覚えた。


「優子…優子…」

「うん…?泣いてるの?…陽平…」



どこにも行かないように、どこにも消えてしまわぬように…壊れてしまわぬように。

強く、優しく、抱き締める。




ふと、後ろに気配を感じた気がした。




瞬間、

―キャーッ!!!!!

街中に居た人の悲鳴、そして


「よ、陽平!!!!」


優子の焦る声が聞こえた。