「はあっはあっ…」


なぜ、こうなるんだ。

どうして俺は、いつも気づけないんだ。

駅の人混みを、俺は掻き分け走っていた。




一時間前……


「でさ、その二年前の被害者、中谷百合って名前じゃなかったっけって」

「ふうん、知らねえけどなあ」

「でもさ、中谷って偶然だと思うけど…優子ちゃんも名字…」

「…まあ、そう…だけど…」

「お姉さんとか、いないよな?」


知らない…。
そう言えば家族の事を、聞いていない。


急に胸がざわついた。