誘惑Baby



「優子、出てきて…?」


なるべく優しく、静かに、にやついてるのがばれないように…。

カチャンと鍵を開ける音がして、ちょびっとドアから顔を出した優子。


「……なんでっ、にやついてんのぉ…」

涙目で必死に睨む。

(バレちゃった)

「にやついてねえよ」

俺はしゃがんで、優子よりちょっとだけ低い位置から見あげる。


すると、不思議と口元が緩み初めてしまって、

「くくっ」

と、つい笑ってしまった。

「?!」


顔を真っ赤にして、わなわなする優子が可愛くて、可愛いくて。

「あはっ、優子…ははっ」

いつまでも笑い続ける俺を、優子は睨みつける。
それもまた、可愛くて。


「好きだよ」

頭を撫でながら、囁く。

「そういう、可愛いとこすげー好きだ」


普段なら絶対、言わないけど…。

今日ぐらい言ってやってもいいだろう。