「神咲家の恥だ、お前は必要ない」



幼い頃、父にそう言われた。まだ右も左も分からない、あの時。



神咲家は代々、一番上の子供が当首になるという掟があることを知った。



だが、それには暗黙の了解があり、



「当主は、男でなければならない」



そう、私は長男ではない。長女なのだ。



女なのだ。神咲家の子供は私一人。



私しか継ぐ者がいない、なのに。



「琴音を、追い出せ」



そんな言葉が、私に。家臣たちに。発せられた。



抵抗なんて出来なくて。私はそのまま神咲家から出て行った。



悲しんでくれる人なんて、誰もいない。



誰も慰めてはくれないし、同情もしてはくれない。



ひたすら北に歩き続けた。食糧も布団もない。



何日も眠らずに、ひたすら歩き続けた。