戦国恋華

あれから二日が経った。


夜通しで宴会が続きられ、お市様も長政様もお久しぶりの休日を過ごされた。


「世話になった」


「またいつでも来いよ。・・・次は敵同士だ」


「あぁ」


長政と政宗は軽く挨拶を交わすと、背を向け、歩みだした。


琴音は三人の後ろ姿を交互に見つめると、自分も急いで長政とお市の後ろに付いた。


琴音が背を向けたあと、政宗が少しだけ振り返ったのは、誰も知らない・・・。








「同盟が・・・・・・成せなかった・・・?」


信長が眉間に皺を寄せながら、杯を啜った。長政は冷汗を垂らしながら小さく頷く。


私はお市様の横に並び、その後ろ姿をじっと見ていた。


「申し訳ない、兄者。だが、私達も全力を出した!決して何もしなかったわけでは・・・・・・」


「黙れぇぇぇぇぇい!!!!」


信長が手に持っていた杯を、長政に向かって投げつけた。お市様は肩を震わせ、長政様は唖然としている。


「この使えぬ鼠めがぁぁ!」


そして、抜刀する。私は反射的に刀を抜き、長政様の前に立ちはだかった。


「琴音・・・貴様、邪魔立てする気か?」


『申し訳ございませぬ、信長公・・・。私が伊達方の機嫌を損ねたがため、同盟が結ばれず・・・・・・・・・』


「貴様が原因であると、言うか」


「琴音!」


長政は琴音が自分たちを庇っていることに気づき、必死に止めようとするが、信長の言葉によって遮られる。


「・・・よかろう、許してやるわ」


信長はゆっくりとした動きで、元の場所に戻る。だが、歩きながら。


「市、近寄れ」


「・・・・・・はい」


そう言った。