戦国恋華

「浅井長政ってのはアンタの事か」


私達の前に胡坐をかく男、その名は伊達政宗。


「もっとも。今日は同盟の件で此処にはせ参じた」


つい先ほど、米沢城に到着して、早速武将たちと話し合いが始まった。


私は浅市様の後ろに、頭を下げて待機。万が一のためだ。


長政様とお市様は刃物を持つことを禁止されているが、私は許されている。


『(このままだと、同盟を結ぶのは難しい・・・)』


緊迫した空気の中、誰もがそう思っている。お市様は威厳に満ちた顔で話しに耳を傾けていたが。


「お言葉ではありまするが」


といった。それを合図に政宗はお市に向き直る。


「貴方様方は、兄様を倒すおつもりで?」


「あぁ。あたりまええだ。魔王(信長のこと)の天下になったら、日の本はお終いだぜ」


『(確かにその通りだけれど・・・・・・)』


政宗の言うとおり、信長は理不尽な戦ばかりをしていた。


何も関係のない国を滅ぼしたり、女子供だけを集めて殺したり。


それ故に、長政は信長に不安を抱いていた。


お市は何を思ったのか、そのまま俯いた。私がどうしたのだろうと、顔を見ようとしたとき。


「大体、アンタも魔王に不満持ってんだろ?早く同盟を破棄しないと、浅井は潰れるぜ?」


「何だと・・・!?」


一番嫌な事を、言われた。長政も殺気を出す。


『伊達政宗・・・・・・貴様ッ!!無礼であるぞ!!』


私は力任せに、刀の柄に手をかけた。


「やめよ、琴音」


お市に静かに制止され、琴音は渋々と手を放した。


『・・・申し訳ございません』


早まってはいけない。そう自分に言い聞かせた。政宗はそんな琴音を見て、


「アンタ、織田の奴だよな?」


と尋ねた。琴音は小さく頷く。


「名は??」


『・・・・・・・・・・・・・・・神咲琴音と申す』


「神咲琴音・・・か。」


政宗は意味ありげに笑うと、再び長政に向き直る。


「何度言われても、返事は変わらねぇ。話はここまでだ。今日はゆっくりしていきな」


長政は気付かれぬよう唇を噛み締めたが、「ありがたく」というと、部屋を出て行った。


私もそれに続くが、一瞬、政宗と目があった気がした。