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 「っ・・・ぃた・・・っ・・・」

「なんでお前はこんなことも出来ないんだっ!」

息を荒げて殴ったのは父。


思い切りビンタされた方の頬に手を当てながら、アタシは、感情のこもっていない、まるで人形のような視線を向けた。

「なんだその目は」

「・・・・・・」

黙って視線をおくり続ける。


「なんとか言えっ!!」

グイッと髪を掴み上げられ、アタシの顔は痛みで歪んでいく。


 ようやくアタシの口から出た言葉は

「・・・楽しい?こんなことして」

ただ、それだけだった。


「・・・・・・ガキのくせに」

父はアタシの胸ぐらを掴み、壁に叩きつけた。


「お前なんか、この家に生まれて来なければ良かったんだ」

そうですか・・・。だけどね、アタシだって・・・・・・

「こんな家に生まれてきたくて生まれる奴なんて一人もいない」

そう毒を吐いた。


すると、父は顔を真っ赤にして、アタシの首をギリギリと締め付けた。

それでも、表情ひとつ変えないアタシを見て、ついに諦めたように部屋を出て行った。



 こんな事をされても泣かない自分ってスゴイと自分でも思う。

“泣かない”

それだけがアタシに残った最後のプライドのような気がした。


だから、これから先も、ずっと泣かない―・・・。