SOCCER

「いやいや、アイツ男だから」

宮本君が静かに言った

「あぁ、そうだった」

気のない返事だったけれど気にしてないようだ

水野君はサッカー部の1年で、中学からサッカーを始めた、女の子のような顔立ちのいわゆる美少年だ。
キーパーをやっているけれど、お世辞にも上手いとは言えない。

「気があんのはお前だろ」
元気が無いままの口調で宮本君が言った

「俺はホモじゃない!水野が代わるって言ってくれたんだよ」

「水野は『寺田先輩が、またトンボ押し付けて行った』って愚痴言ってたぜ」

立山君が後ろから声をかけた

「啓ちゃん、お疲れ。今日も決まってたよ」

「お前やっぱホモだろ」

「だから違うって!今のは話を逸らそうと思って」

「堂々と言うなよ」

「お前、1年に仕事押し付けてバッカだろ?自分でやれよ」


「雑用は1年の仕事だろ?俺たちもやってたじゃん」

「この前の部会は何だったんだよ」

3年生が引退した次の日に部会が開かれ、そこで2年も掃除・洗濯、その他雑用をすることになったのだ。

「馬庭先輩もキャップになった頃はそんな事言ってたよ。結局、雑用したのは俺たちだったじゃん」