ブラウン管の中の彼女



「今はね~新しく始まるドラマの撮影中なんですよ~」


香川さんは廊下を歩きながら説明してくれた。


「へぇ…」


適当に相槌を打つ。


「祐一郎くんは実早さんが仕事をするのを見るのは初めてですよね?」


香川さんは首を傾けながら僕を見た。


「テレビでは見てますよ」


テレビに実早ちゃんが出ない日なんて殆どない。


「じゃあ、驚きますよ。実早さんの様子に♪」


香川さんは楽しそうにスタジオの扉を開けた。


沢山の機材と人の中でも僕の目は真っ直ぐ実早ちゃんの姿を捉えた。


僕はその場から動くことが出来なかった。


「祐一郎くん…?」


香川さんはいきなり立ち止まった僕に戸惑いを隠せず顔をのぞき込んできた。