ブラウン管の中の彼女



すす、すっすごい!!


僕は叫び声を必死に押し殺した。


エレベーターに行く前にテレビの中の住人である方々とすれ違ったのだ。


近くで見るとすごいなあ…。


僕はその姿を知らないうちに目で追いかけていた。


端からみたら挙動不審だろう。


そのことに暫くしてから気づき、慌ててエレベーターへと向かう。


変な感じ…。


僕は持っていたショルダーバックのベルトをぎゅっと握りしめた。


居心地が悪すぎる。



同じ芸能人でも実早ちゃんなら平気なんだけどな…。


彼等が持つ独特の威圧感というものが無防備な僕に襲いかかってくる。


制服という目立つ姿も相まって、僕の背中にはチクチクと視線が突き刺さった。


エレベーターの到着をこの時ほど喜んだことはない。


僕は空っぽのエレベーターに飛び乗り3階を目指した。