実早ちゃんは僕の顔を両手で包み込んで自分の方を向かせた。


「無理しないで!!」


その言葉にため込んでいたものが一気に溢れ出た。


僕は持っていたスポンジを放り出した。


「好きなんだっ…」


実早ちゃんが好きなんだ…っ…。


抱きしめた体は折れそうなほど細い。


「好きなんだ…」


どうして樺摘さんは別れろなんて言うのだろうか…?


今更離れられるはずがないのに―…。


「祐ちゃん…?」


僕の取り乱しように実早も不安そうだった。


「ごめん…もう少しだけ…」


もう少しだけこうしていたい――…。


僕は知らず知らずのうちにぎゅっと実早ちゃんを抱きしめる力を強めた。