「もう♪祐ちゃんってば帰ってくるのが遅いんだから~♪」


すりすりと顔を寄せてくるのは多分この世界で1人しかいない。


「実早ちゃん…痛い…」


実早ちゃんが抱きついてくるのはいっつも突然だ。


だから大抵の場合、僕はバランスを崩してしまうんだ。


「だってえ~嬉しいんだもん★」


「だもん★って…」


毎回毎回こんなことされてたら僕の身が持たないよ…。


「祐一郎?お前、玄関でなにして―…」


タイミング悪く現れた樺摘さんは絶句した。


それは実早ちゃんもだった。




「「あ―――――――っ!!」」




お互いに指を指して叫ぶ。


「お前!!人の家でなにしてんだよ!!」


「あんたこそなにしてんのよ!!」


実早ちゃんは素早く立ち上がり樺摘さんを睨んだ。


「えと、2人ともここじゃ目立つから…」


玄関先で揉めないで欲しい…。