【短編】宇宙に染まる指先




とくん とくん

柔らかくて温かい、音。

速さの違う二つの鼓動が、ゆっくりと打たれる。


「拓海くん」


鈴を転がしたような声で、ちぃは俺を呼んだ。


「あのね、」


―――もう怖くないからね。


まるでアイロンで小さなシワを丁寧に丁寧に伸ばすみたいに、優しく、そして強くちぃの声がその言葉をなぞった。


「拓海くん。私がいるよ、だからもう怖くないんだよ」


「………っ」


「大丈夫」


何もかも見通しているかのように、ちぃはそう言って俺の頭に触れた。


―――よく頑張ったね。


いたわりを込めて、小さな手がゆっくりと髪を撫でた。

それがきっかけとなり、視界がぶれた。


「っぅ……」


くそ、かっこわりぃ…

声を押し殺し、ちぃの薄い肩に額を乗せる。

情けない姿をさらしていると分かっていても、どうしようもなかった。