「―――ご機嫌いかが?拓海くん」
「………っ」
答える余裕など、なかった。
あんなにもだるく感じていた体が、まるで羽のように軽く感じる。
脱兎のごとく走り出し、俺は本能のままに目の前の小さな体を抱きしめた。
「ちぃ、ちぃ…っ」
華奢な体が潰れてしまいになるくらい、強く強く、力の限りに抱きしめた。
嗚呼、何でこんなにも。
満たされる。
「ちぃ…」
「ん?なぁに?」
「千尋」
「拓海くん」
大丈夫だと。
私はここにいると。
そう言うかのようにちぃは俺の背中を撫でる。
小さな小さな柔らかい手が肌を滑る度、心が震え叫んだ。
「千尋…」
「なぁに、拓海くん」
「どうして……」
嗚呼、うまくいかない。
言葉が喉の奥で絡まって熱い塊となって、声にならない。
それがどうしようもなく情けなくて、俺は回した腕により一層力を込めた。

