「…こんな時間にナンパか?」
茶化すようにそう言うと、声の主は明るく笑った。
「ナンパ、ね。されたかったんだ?」
「馬鹿言え、誰が」
背中越しに聞こえてくる声がまた笑う。
「そんなこと言って寂しかったんでしょ。泣きそうな顔してたよ」
「…………」
おい、いつからいたんだコイツ。
チッと舌打ちすると、ますます面白がるように笑った。
「知りたい?」
「あ?」
「何でここにいるか」
じわじわと心に染み込んでくる暖かくて、冷たい矛盾した気持ち。
それに安心している俺を笑い、目を閉じた。
「…待てなくなったのか」
「違うよ」
「恋しくなったか」
「それも違う」
「なら…」
―――離れるためか。
そう尋ねると、声は押し黙った。
俺たちの間に沈黙が降りる。

