「――――結婚、してくれ」
俺の一世一代のプロポーズは、声も震え、涙で千尋の顔さえ見えない、最悪の出来だった。
痛いくらいの沈黙が降り、いたたまれなくなった俺は瞼を閉じようとした、ら。
「拓海くん」
名を呼ばれ、目の端に唇が寄せられた。
千尋の柔らかな唇が、ふわりと俺の肌に押し付けられ、涙を丁寧に拭っていった。
細長い指で頬を撫で、ゆっくりと千尋は驚き、固まっている俺から離れた。
そして、悪戯っぽく笑う。
「――――毎日“愛してる”って言ってくれなきゃ、ヤダ!」
そんな可愛いおねだりをして、千尋は俺の首に抱き着いた。
すりすりとまるで猫のように甘えてくる千尋。
その姿は先程の俺を彷彿させた。
―――どうやら俺たちは似た者同士らしい。
そこまで考えると、ふわふわとさっきから俺の鼻孔をくすぐる甘い匂いにニヤリと笑い、きつくきつく千尋を抱きしめて、囁いた。

