「ずっと、ずっと会いたかった」
柄にもなく、素直な気持ちがするすると声となって、静かな空間を揺らした。
「早く迎えに行きたかった。手を繋いで、抱きしめて、キスして、」
お前に会いに行こうとする度、俺の中の“何か”が引き留めた。
まだだ、と。
まだ今はその時じゃないと、“何か”が低く唸る。
それを振り切って行こうとするならば、途端に足が、体が動かなくなった。
「触れたくて、会いたくて、声が聞きたくて、なのに…」
今なら、分かる。
あれは俺に自信がなかったからじゃない。
ただ怯えていたんだ。
もしも拒まれたら、と。
忘れられていたら、と。
「ごめん…千尋」
怖かったんだ。
嫌われた確証なんてない、でも好かれている確証もなかった。
お前が傍にいないだけで、俺は息をすることさえ満足に出来なかったんだ。

