星が瞬いている。

手を伸ばせば届くと信じて疑わなかった昔の俺とは違い、世間の荒波に揉まれた今の俺は、肴のスルメを片手にビールを煽りながら、黒い画用紙に絵の具が散ったような空を眺めていた。



上京してきて早三年。

平々凡々に生きてきた俺は、無難に地方の大学に入学・卒業し、あれやこれやのうちに大企業の内定を獲得。

そんな俺の出世を両親は泣いて喜んだ。

しわくちゃに目元を緩め、何度も良かった、良かったなぁと繰り返した。

何が良かったのか、俺にはさっぱり理解出来なかったが、これからの生きていく術を自分自身で使うことが出来ることに、ただただ安堵した。

別に嬉しかった訳じゃない。

どこに就職しようがしまいが、そこが俺の終着駅で、始まりの場だった。

何でも思い通りになると信じて疑わなかった。


「…ラーメン、食いてぇ」


嗚呼そうか。

昔の俺って、昨日の俺と変わりないのか。