「昨日は情けないけどそれしか聞けなかった。
オレに出来ることがあれば協力するから、彼女の話を聞いてほしいんだ。」

大和先生が私に向かって頭を下げた。

(なんて患者さん思いな先生なんだろう。)

私は大和先生の誠実な人柄に触れて、初めてこの先生は尊敬できるし、
信頼できる先生なんだと感じた。


そして、先生は私をその患者さんの病室まで案内し、紹介してくれた。

「花菜。よろしく。
じゃあ、相川さん。彼女と少し今の生活状況について話をして下さい。」

そう言うと大和先生は後ろ手で手を振って病室を後した。


「はじめまして。医療相談室の西村と申します。
よろしくお願いします。」

まずは、私の通り一辺の自己紹介をして生年月日、家族構成、
既往歴(これまでにしたことのある大きな病気)などの
機械的な質問をしながらどのように本題を切り出すか模索していた。

相川さんはベッドから半身を起こしていたが、
顔は窓際を向いたままで私に顔を見せてくれなかった。