「ねえ、花菜。
オレ、悪いんだけど医者だから、 
福祉のことなんて分からないし、
正直興味もないんだけど、

昨日の患者さんばっかりはどうにか
助けてあげなきゃって思ったんだ。

…だから、力を貸して欲しい。」


そう言うと大和先生は昨日出会った
患者さんについて私に話してくれた。

大和先生の話はこうだった。

昨夜、深夜12時頃ひとりの女性が救急車で運ばれてきて、
大和先生に処置の依頼があって
一階に降りて行ったんんだけど…、

「左手の小指が痛いって位
だったから、そんくらいで救急車
使うなよ。なんて思ってたんだけど、

…会ったらびっくりしちゃって…。」

いざ処置をするために患者さん
の顔を見たら、

腫れ上がるほどの痣があったんだと
大和先生は続けた。

冷静を装って対応するのは
大変だったけど、
なんとか目に見える傷の処置は
終わらせて、

「医者だからもちろん聞いたよ。
顔の傷はどうしたんだって。

犯罪に巻き込まれてるなら、こっちには通告義務があるんだよってね。」

そしたら、その患者さんは
ポツリと夫に殴られた…。
と呟くように大和先生に話したと
いうことだった。