~三階 カンファレンスルーム~

緊張を解すために深呼吸をひとつして、軽くノックをした。

「お疲れ様です。相談室の西村です。」

「入って。」

中から声がした。
ゆっくりドアを開けると、
大和先生がひとりで回転する椅子に
座って腰を伸ばし、ストレッチしていた。

「何してんですか先生?」

「ストレッチ。この商売
運動不足だからね。」


と、腰の次は背伸びをし始めた。

(何をしててもカッコ良い。)

なんてことを考えてたけど、
大和先生のマイペースっぷりが
なんだか、これから聞く相談が
ヘビーなんじゃないかと
思わせられたりもした…。

私は大和先生の視線が、
真っ直ぐにこない、斜めの席に座った。

「さて。仕事の話しよっか。」

大和先生はストレッチを辞めて、
椅子に座り直した。

どういう相談なのか、
少し緊張しながら、でも顔なんて
まともに見れないから、
大和先生の襟元に視線を置いていた。

「実は昨日オレ夜勤でさ。

まだ帰れなくているんだよね。
大丈夫?クサくない?」

なんて言いながら、身を乗り出して
私の方へ近付いてきた。


(お願い、寄ってこないで…。)

「先生。匂わないですから、
身体引いて下さい!!」

ちょっとオーバーな位引いてみると
大和先生は、

「ごめん。ごめん。」

と言いながら元の位置に戻った。

その次の瞬間、大和先生がふざけるのを止めて、私に目を合わせてきた。
これまでに見たことがないほど
真剣な表情だった。
その真っ直ぐな視線を
私は避けられなかった…。