「こんばんわ~。」

「慎治。いつものお願いね。」 

私たちはお店に入るとカウンターの端にあるいつもの定位置に座った。

慎治君のお店である
《coco mo beer》(ココモ)は
私たちが勤める病院から2駅先の
駅前にある小さなお店。

私も奈南も自宅からの最寄り駅近くの
ココモが大のお気に入り。

自宅からの近さも魅力的で、
奈南は自転車で帰れるところに
自宅があるし、

私は奈南より更に近い駅前の
社宅で生活している。
ココモからなんと歩いて
五分の近さなのだ。

平日とあってココモはけっこう
空いていた。

「お疲れさん。」

そう言いながら慎治くんがビールを
持ってきてくれた。
ひとつは普通の生ビール。
もうひとつは櫛形にカットされたシャットレモンが沈んだ生ビール。

実はこれ、奈菜の大好きな
極甘シャンディガフ。

普通のシャンディガフは生ビールと
ジンジャーエールを半々に入れる
ビアカクテルなんだけど、

奈菜はそこに甘さを加えるための
ガムシロとビールの苦味を抑えるためにレモンを絞っている。