「ありがとう…。

少し時間をもらうことにするわ。
私も前を向いて歩いて行きたいから。」

「ご連絡お待ちしてます。
それと、相川さん。

ヒモテコは、モテない子の意味
なんですよ。

全く男っ気なくて困っちゃいます。」


私はニコっと笑って、相川さんに向けてピースサインをして見せた。


(それにしても、女性に手を
上げるなんて最悪だ…。)

なんてことを考えてたら、あっと言う間に勤務時間が終わっていた。

「早い。1日早いよ~。」

なんて言いながら、パソコンの電源を
切ろうとすると、どこからともなく
篠山主任の声がした。

「西村チャン。
明日で良いんだけどさ、
コレ段取っといて。」

(西村ちゃんだ!?)

気持ち悪い位の猫撫で声に
背筋が凍りついていると
後ろからA4の紙を一枚渡された。

「『避難訓練実施要領』???
なんだ、コレ?」

(ナヌ?)

「病院のような公共施設とかは
毎年、避難訓練をやらなきゃ
ならないのだよ。西村クン。
去年までは俺が段取り組んで
まとめてたんだが、メンドウ…いや、
忙しくて今年は出来そうにないんだ。

日程は決まってるから、
あとは消防署の職員の人と
いろいろ決めといて。」

「え?」

(なに。どぉいうこと?)

訳が分からす放心状態の間に
篠山主任は消えていた。