陸は、ニヤニヤしながら私を見る。
「もー!陸っ、いいから入ってて」
「はいはい、早くしろよ」
バタン、と閉められたドア。
なんか、変な汗が出てきた・・・。
「今の、弟?」
「ハイ」
拓馬さんの言いたいことが、分かる。
「・・・失礼だけど、全然「似てないでしょ?」
拓馬さんの言葉に私の言葉を被せた。
・・・似てるわけ、ない。
「本当の弟じゃないんですよ。今、中1なんですけど。2年前に・・・。
えと・・お母さんの再婚相手の子供なんですよ」
ははっ、と笑って見せると、拓馬さんは顔を歪めた。
お母さんが再婚したのは、お父さんが交通事故で亡くなってから、五年後のことだった。
お父さんが亡くなったとき、私は8歳だった。
お父さんっ子だった私は、お父さんが死んでから、一週間部屋に籠りっぱなしだった。
お母さんが、私を必死で励ましてくれたおかげで、なんとか立ち直った。
お母さんだって、お母さんの方が、辛かったはずなのに。
頑張って、明るく振舞うお母さんを見ていたら、私は、惨めに見えた。
・・・中学に上がったばかりだったとき。
「あのね、郁。お母さん、再婚しようと思うの」
そう言って紹介してくれたのが、伊藤隆(いとう たかし)さんと、伊藤陸(いとう りく)だった。
隆さんは、お母さんの二つ上で、陸は、私の二つ下だった。
お母さんが、幸せになって欲しいから。大好きだから。
