外に出ると冷たい風が頬を刺して、月が綺麗にグラウンドを照らしていた。


サッカー部は……、どうやらまだ練習中みたい。

暗くてはっきりとは見えないけど、怒鳴り声みたいなのが聞こえた。


「……サッカーバカ…」


思わず呟くと、あたしは踵を返してバス停まで向かおうとした。


「…―……、…………」

「――……っ!」


すると前方に1組の男女がいるのが見えた。


サラサラの黒髪の綺麗な女の子と、ジャージ姿の長身の男の子。


グランド前のベンチにいたその2人は、あたしに気づかず、そのままキスしをした。


一瞬、羨ましいな、と思った。

あんな風に仲の良いカップルになりたかった、と。


でも次の瞬間、強烈な違和感を感じた。


「………っ!」


月明かりに照らされた男の子の横顔に、どうしようもなく胸が痛くなった。


「柊哉……?」


あたしの呟きに気づいたのは柊哉ではなく、女の子だった。

でも、久しぶりに見た柊哉の横顔をかっこいいと思ったあたしは、相当のバカだ。


そして女の子は、あたしに見せつけるかのように、もう一度柊哉に顔を寄せた。