突然目の前で誰かが
高い岩山から落ちた。

しかも深いため、
行くことを禁止されていた海に……。


おぼれていることを
誰にも気付いてもらえずに、もがいている少年…。

私は迷わず、
海に飛び込んだ。

「ゅっユリ?!」

カバンをなげ、
少年に向かって
泳いだ。


「たっ助けて…」

「捕まって!!」

私は手を伸ばした。

岸までとても遠い。

戻れるかも少し危うかった。
少年はせき込みながら必死に私の腕にしがみついた。

涙が流れてる。

私は思わず頭をなでた。

「大丈夫」

それは、
少年を安心させた言葉

自分を安心させる言葉でもあった。


少年は笑った。

少年を背負い、
必死に岸まで泳いだ。

「なんであんなとこにいたの?危ないから立ち入り禁止になってるのに…」

と聞くと、
「誰にもいわない?」

と言って来た。

何がなんだかわからず深くうなずいた。

「死のうとしたんだ…でも出来なくて…そしたら足滑らせてまっさかさまに落ちたの」

涙がでた。
まだ12、3歳の子が
こんな事を思うなんて……。

「僕のために泣いてくれるの?」

「だって…生きたくても生きれない人だっているんだよ…」