苦く甘い恋をする。

最初は広げて叩いていた手。


それをグッと握りしめて、こぶしにしたものを振り下ろすと、ヤツはやっと笑いを止めて起き上がった。


そして、目尻に浮かんだ涙をすくいながら私を見下ろす。


「奥脇美姫は、その名の通り、“姫”だっていう噂」


「……はぁ? 何、ソレ」


「でも、さ。今日見聞きした限りでは、おまえ……。“姫”っていうより“女王様”だろ。うん、間違いない」


そう言うと、ヤツはまた笑いを滲ませた。


そんなヤツを見上げ、こぶしを固め、ヤツの目の前にソレを突き出す。


「長谷川くん。それ以上笑うと、ぶつよ」