苦く甘い恋をする。

スルリと口をついて出た“おまえ”という、この男に相応しくない言葉遣いに、眉がピクリと動く。


そんな私の表情に気づいたからか、次の瞬間には余裕が張り付いたようないつもの笑顔に戻って、ヤツは言った。


「だからさっき、釘を刺したつもりだけど?」


「え? 何のこと?」


ヤツのスーツの衿とネクタイを掴んだままの状態で、私は眉をひそめた。


そんな私の手の上にそっと手を重ねると、ヤツは襟元から私の手を引き離す。


「覚えてないのか? あまり期待されても困る。俺が好きなのはキミじゃないと言ったのは、ほんの数分前……」