「じゃあ、また明日」 タクシーがマンションの前に着いた瞬間、隣に座っていた長谷川くんは、軽く片手をあげた。 「……う、うん」 何て言っていいのかわからず、適当に返事をして、タクシーから降りようとすると……。 「あ、奥脇さん。忘れ物」 私を呼び止める小さな声が聞こえた。 「……え?」 何か忘れたっけ?