キスなんて、そんなの大したことじゃない。


ただ、唇と唇が触れるだけ。


触れる前と触れた後に、何か変化が生まれるわけじゃない。


こんなの、息を止めて我慢していれば、いつかは終わる。


でも……。


“嫌だ”と言わなかったはずなのに、私の唇にはいつまで経っても何も触れず。


「……?」


私はそろそろと体を緩め、ゆっくりと……ゆっくりと目を開けた。