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「ここ、いいですか?」



賑やかが止まらない教室に、さらりとした声が響いた。


もう休み時間も終わりそうなこの時間に席を探すのは、なかなか難しいと思う。


上手くまとめて置いてあったコートとマフラーを抱え直してから、あたしは「どうぞ」と席を立った。


奥に座っていた晴香も、ゆっくりと立ち上がる。



「あ……、もしかしてこの間の?」


「え?」



さっきのやり取り以上に話しかけられるなんて思ってもいなかったあたしは、少しびっくりして眉間を硬くした。



目の前の女の子は、ふわふわとしたベージュのコートを着ている。


肩の辺りまでのふわふわとした茶色い髪とくりっとした綺麗な目が、そのコートにぴったりだ。


この色と素材って、どこかにぶつかりでもしたら一発でアウト。


一番にそんなことを考えたあたしとは、住む世界が違う。



「この間、結に来てたでしょ? 2人で」


「もしかして、篤が紹介してくれた子?同級生だって」


「あー……顔は、何となく?」