俺のシンデレラになってくれ!

朝からずっと店にいるんだから、やる気がないわけではないんだと思う。


でも、30代にも40代にも見えるよれっとした外見と、決して張られることのない声の店長からは、やっぱりやる気が感じられない。



「篠原、これやるよ」


「何ですか? これ」



片手でひょいっと渡された紙の束を、条件反射みたいに受け取った。


新発売のサンドの写真がどんっと乗ったチラシには、細かい切り取り線でいくつも正方形が描かれている。



「見りゃわかるだろ。新しいクーポン券」


「で?」


「外で配って来い。ファーストフードっぽいだろ。全部なくなったら戻ってきていいから。立ってるだけで給料もらえるなんて甘すぎる」


「……そう思うなら帰してくれたっていいのに」



でも、せっかく来たんだから稼がなきゃ損かぁ……。


それに、このままレジに突っ立っているだけなのが申し訳ないのも確かだ。


楽してお金が稼げるなら、それはそれでラッキーだとも思うんだけど。



「わかりました。行けばいいんですよね?」


「そ、よろしくー」



ひらひらと片手を振った店長を軽く睨みつけてから、あたしはガラスのドアを押し開けた。


刺されたみたいにするどい空気が顔に当たる。


あたしは、思わず両肩に力を入れた。



「はぁ……」