俺のシンデレラになってくれ!

 3


「今日、篠原に来てもらったのは間違いだったかもしれない」


「……さらっとそーゆーこと言うの、やめてもらえます?」


「でも、篠原も思ってただろ?」



レジの近くにあった棚に資材を補充していたあたしの隣に来た店長が、溜息を吐き出した。


あたしにまで伝染してきそうな溜息を、思わず睨みつける。



「いくら平日だからって、さすがに暇すぎる」



あたしを見て小さく笑いながら、店長はレジを操作し始めた。


タッチパネルみたいになってる画面に、今日の売り上げが30分単位で浮かび上がる。



「まだ10万とか……。駅前だし、結構いい場所にある店なんだけどねぇ、ここ」


「店長のやる気のなさが伝わってるからダメなんじゃないですか?」



溜息交じりの店長にそう言って、何となく別の資材に手を伸ばした。


あまりにもお客さんが来ないから、お昼の間になくなった資材の補充も完璧だ。


ストローもコーヒーのシロップもミルクも、きっちりレジ下の引き出しにおさまってる。


もう1人のバイトの子は、2階の客席を掃除しに行っているところだった。



「やる気がないわけないだろ。やる気を素直に表現できないくらい不器用なんだよ。格好いいか?」


「ノーコメントでお願いします」



相変わらずやる気のなさそうに見える店長は、笑いながら近くの棚に手を伸ばした。