背中側から飛んできた声に振り返ると、雅也が当たり前のようにあたし達の後ろの席に座った。


篤も、戸惑いながらイスを引く。



「興味のあるものに対するコイツ嗅覚は動物並みだな。俺もびっくりした」


「あたしは、2人がここにいることにびっくりした」



晴香から筒抜けになってるだろうあたしの時間割のことを思えば、2人がここにいるのは不思議じゃない。


だけど、ちょうど授業が始まろうとしてる今、2人がここにいるのはおかしいような気もする。



「空きコマだからさ、次。ここならあったかいし、寝る場所としては申し分ないかと……」


「授業中に寝るのは良くないんじゃない?」


「それ、美砂が言うと説得力ないから」



すぱっと言い切る晴香に、思わず肩を縮めてから、あたしは教室の正面を向いた。


黒板の前では、授業の準備なのか、先生がマイクとパソコンの調子を確かめてる。



「ニットの首元の開き具合もいい感じだね。本当、篤よく見つけたな」


「美砂のいつものスニーカーでも着られるように、スカートはデニムにしたんでしょ?
こっちのダメージ具合もいい感じなのよ。しかも、すそにレースとか可愛すぎ」


「ここまで尽くしてもらえるなんて、美砂ちゃん幸せ者だなぁー」


「頼んでないし! 尽くしてほしくなんてないっ!」