俺のシンデレラになってくれ!

「あ、ねぇ!今日はちょっとカラオケでも行かない? 今日、ウチの最寄駅にあるとこが安いんだよね。美砂も定期券内だし、どう?」


「へぇ、いいね! あ、ごめん。メールみたい」



晴香に軽く謝りながらメールを開く。


浮き上がって来たのは、パソコンから送られてきたらしい無機質な文面だった。



「今日の夜シフトに急に空きが出ちゃったから入れないか、って。店長が」


「店長、タイミング自重でしょー」



あたしは、無意識にごめん、と呟いた。


ここで謝らなきゃいけないのは、あたしじゃなくて店長だし、店長じゃなくてシフトに空きを作った人なんだけど……。


同じことを不思議に思ったのか、晴香は笑いながら口を開いた。



「まぁいっか。今度ぱーっと遊べるように稼いできたら?」


「ありがとう。じゃあ、カラオケはまた次で」


「もちろん! まったく、バイトバカにも困ったもんだわ」



綺麗に微笑む晴香を見て、思わず眉間にしわが寄った。



「バカは余計でしょ?」



順番が回ってきて、先に注文を始めた晴香の背中に、小さな溜息を落とす。


晴香の好きなようにさせたら、世の中の大半の人は“バカ”になるんじゃないだろうか。


もう一度溜息を落としたところで、カウンターから注文を促す声が聞こえてきた。


迷わず、ランチセットを注文する。



「やっぱ、ボリュームすごいわ」


「だね。お腹いっぱいで午後も寝ちゃいそう」



先に品物を受け取った晴香と軽く会話を交わしてから、あたし達はそれぞれ、会計のカウンターに向かった。