俺のシンデレラになってくれ!

何となくそう聞くと、晴香はあたしに視線を移した。



「まぁ、それなりに。ウチのサークルは、“テニサー”って言ってもちょっと特殊だからね。テニスバカばっか。変にきゃぴきゃぴしてないし」


「きゃぴきゃぴしてる晴香なんて想像できない」


肩をすくめながらそう言う晴香に言葉を返した。


いつの間にかまた、視線はメニュー表を追っている。



「でしょ?まぁその分、純粋にテニスができて楽しいからいいんだけどね。コンパでわいわいするのも嫌いじゃないし。
よし、あたしもランチセットにしよー」



楽しそうにそう言うと、晴香はくるっと列の正面を向いた。



「え、結局?」



思わずつぶやいたあたしを振り返りながら、晴香がにやりと笑う。


身長も体型もそんなに変わらない晴香に視線を送りながら、さっきまで感じていた不思議な気分を思い出した。



「うん、お得感あるし。美砂はサークル、いいの?」


「あたしには、サークルなんて絶対向かない」


「そんなことはないでしょ」


「いや、生産性がなさすぎて吐き気がする」



さらっとそう言ったあたしを見て、晴香が思いっきり笑い飛ばした。


お昼休みの影響で大分騒がしい食堂に、しっかりと晴香の笑い声が響く。



「生産性って……。何か違う気がするけど、バイトバカの美砂にはぴったりだわ」



少し息を整えながら言うと、晴香は何事もなかったみたいにランチセットを注文した。