3
「……美容室?」
「何で?」
篤について電車に乗って、大学のすぐ近くの駅で降りた晴香とあたしは、目の前の建物を見上げてぽかんとした。
白い外壁がお洒落な2階建ての建物には、どこか見覚えのある看板が目立ってる。
「ここ、篤の実家」
「正確には、両親がやってる店の姉妹店。家自体は別のとこ」
「姉妹店……」
世界が違う。
そう思うのはあたしだけだろうか。
いや、そんなことはないと思う。
「とりあえず入って。さっき確認してるから、少し待てば大丈夫だと思う」
篤の話は、何の確認ができてて、何が大丈夫なのかの説明がない。
当たり前のようにドアを開けてあたし達を促す篤には、そんなことはどうでもいいらしい。
……本当に周りが見えなくなるタイプなんだな。
そんな篤を羨ましいなんて言ってた、雅也の気持ちがわからなくもない。
「篤くんいらっしゃい。落ち着いたら呼ぶから、中で待っててもらえるかな?」


