無表情の篤に負けたくなかったあたしは、腕を組んで聞き返した。
イスに軽くもたれかかって、少し高いところにある篤の目をしっかり見つめる。
そんなあたしを見て、頬を上げると、篤は手元のコーヒーを一気に飲み干した。
「次は俺について知ってもらうから。早くそれ飲んで。移動する」
「は?」
いきなり立ち上がった篤にびっくりして、あたしも手元のココアを一気に飲み干した。
すっかり冷めたココアの甘さが、口の中にぴったり張り付いたみたいで変な気分になる。
先にカウンターで会計するようになってたから、出口までに篤を遮るものは何もない。
あたしの分のお金まで迷わず出してた彼のことなんて一生理解できない気がするけど……。
何となく、そんなことを口に出せないような雰囲気が伝わってくる。
「“俺について”……って、いよいよ告白みたいになってきたんだけど大丈夫?」
「大丈夫じゃない? いやー面白いわー」
相変わらず好き勝手に話す2人に思わず苦笑いを返してから、あたしは篤の後を追った。


