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「はぁぁぁ……」


「篠原ー、ここがどこか知ってるかー?」



誰もいないカウンターで、あたしは大きく息を吐き出した。


早朝のバイトは、忙しい時間とそうじゃない時間の差が激しい。


開店と電車のスケジュールに合わせた忙しさの隙間くらい、少し息も吐きたくなる。



「カウンターです。あたしのバイト先です。ファーストフード店です」


「そうか。わかってるなら溜息しまえー」


「だったら店長もけだるさしまって下さい」


「これはデフォルトだろー。俺の魅力のうちじゃねぇか。溜息と違って接客に支障ないしな」



完全に支障アリだと思うのはあたしだけなんだろうか。


自分がお客様だったら、朝からこんなけだるい顔なんて見たくない。


……元気すぎる店員さんも嫌だけど。



やっぱり、この店長は別の店舗に行ったらやっていけないと思う。



「けだるさが店長の魅力に入るかどうかについてはノーコメントでお願いします」



そう言いながら、あたしはしゃきっと背筋を伸ばした。


店長にはいろいろ言いたいこともあるけど、ここで溜息を落とし続けるのは確かによくない。


急にしっかりと姿勢を整えたあたしを見て軽く笑うと、店長はまた口を開いた。