もう何も話すつもりがないのか、晴香はそのまま視線を落とした。
心の準備とか、間に合えばとか、何か怖いんだけど……。
あたしは、何回目かわからない溜息を落としてからシャーペンを握り閉めた。
「爆睡だったけど、今日も朝バイトだったの? お昼どうする?」
授業が終わった瞬間に、教室がにぎやかな雰囲気に包まれた。
少し長引いたせいもあって、周りが動き出すタイミングも早い。
「バイト。何も持ってないから学食にしない?」
「了解。じゃ、とりあえず行きますかー」
そう言って、持っていた鞄を肩にかけた晴香の後ろに続いて、あたしもドアの方へ向かう。
「美砂!」
教室の後ろの方からそんな声が聞こえた気がして、視線を送る。
気のせい、かな……?
目立つものも特に見当たらないし、そう思ってそのまま足を進めた。
「篠原美砂!」


