俺のシンデレラになってくれ!

「……シンデレラ、なってくれるの?」



こんな突拍子もない発言にだって、それなりの落ち着きを持って対応する余裕を用意できるくらいには。



「……なる気は、ない。そう言ったら、どうする?」



まっすぐ篤を見上げながら、ゆっくり答える。


しっかりとあたしに視線を合わせてから、篤はまた口を開いた。



「じゃあ、信吾さんに一生ついていくって言ったのは何?」


「国立大学の職員なんておいしいポジションの人と、個人的に知り合いになるのは初めてだったから」



さっきまでの話は、篤の中で終わってるのかな。


険しい表情のままの篤につられて、あたしの表情硬くなる。



「それって、社会人と付き合いたいみたいな、そーゆー話?」


「は? ばかなこと言わないで!」



溜息を落としてから、もう一度言葉を探す。



「あたし、公務員になりたいの。大学職員は少し違うかもしれないけど、同じように勉強して仕事を手に入れた先輩であることに変わりはないでしょ?
だから、会ったばっかりだけど信吾さんのことはすごいなって思ったし、わからないことがあった時にアドバイスをもらえたら嬉しいって思ったの」



将来どうしたいかなんて、こんな風にちゃんと声に出したのは初めてだ。


声に出したら気が散っちゃいそうで、自分で決めた目標を達成できないんじゃないかって怖かったから。


そう思ってたのに、篤の作り出すよくわからない雰囲気と質問が、どんどん言葉を引き出してくる。



「浮ついた意味で“ついていきたい”なんて、言うわけないでしょ?
その辺の女の子達と一緒にしないで」