俺のシンデレラになってくれ!





「とりあえず……、何で来たの?」



サークル棟の裏。


ちょうど駅との間にあたる場所まで連れてこられたところで、篤はぱっとあたしの手をほどいた。


もとは真っ白だったはずのサークル棟の壁が、静かな雰囲気を助けてる。



「雅也に紹介してもらったから。今日は暇だったし、少しくらいなら……と思って」



固まるあたしの背中から顔を出して、晴香がさらっと答えた。


それを見て、篤が軽く息を吐き出す。



「で? それは“結”に興味があったからだと思っていいの? 信吾さんが言うみたいに」


「いや、それは……」


「それとも、“信吾さんに”興味があったから?」


「はぁっ!?」



思わず声をあげたあたしを見て、篤が眉間にしわを寄せた。



「意味わかんないこと言わないでよ!あの部屋の前で初めて会ったんだから」


「あ、それはあたしが保証するわ。あの人に会ったのは、今日が初めて」



眉間にしわを寄せたいのはあたしの方だ。


暢気な晴香の声が、冷たい空気の中にすっとのびる。


何となくだけど、それに安心する。