2
「とりあえず……、何で来たの?」
サークル棟の裏。
ちょうど駅との間にあたる場所まで連れてこられたところで、篤はぱっとあたしの手をほどいた。
もとは真っ白だったはずのサークル棟の壁が、静かな雰囲気を助けてる。
「雅也に紹介してもらったから。今日は暇だったし、少しくらいなら……と思って」
固まるあたしの背中から顔を出して、晴香がさらっと答えた。
それを見て、篤が軽く息を吐き出す。
「で? それは“結”に興味があったからだと思っていいの? 信吾さんが言うみたいに」
「いや、それは……」
「それとも、“信吾さんに”興味があったから?」
「はぁっ!?」
思わず声をあげたあたしを見て、篤が眉間にしわを寄せた。
「意味わかんないこと言わないでよ!あの部屋の前で初めて会ったんだから」
「あ、それはあたしが保証するわ。あの人に会ったのは、今日が初めて」
眉間にしわを寄せたいのはあたしの方だ。
暢気な晴香の声が、冷たい空気の中にすっとのびる。
何となくだけど、それに安心する。


