持ってた紙をがさがさ鳴らしながら近づいてきた篤は、そのままあたしの右手を取って部屋の出口に向かいはじめた。
「ちょっと!何なの?」
「いいから来て!晴香ちゃんも!」
「はーい。お邪魔してすみませんでしたー。失礼しまーす」
後ろを振り返ることはできないけど、面白そうにそう言う晴香の声が聞こえる。
それに答えるように、信吾さんの「またねー」なんていう軽い声も聞こえた。
「ねぇ!どこ行くの?」
「いいから黙って!静かに黙ってついてきて!」
今までに聞いたことがないようなびしっとした声でそう言うと、篤はまた静かに歩き始めた。
掴まれたままの右手は、決して痛いわけじゃない。
それでも、いつもとは違う拘束感が、何となく恥ずかしい。
駆け足で追いついた晴香に視線を送ると、遊び道具を見つけた子どもみたいな視線が返ってきて、あたしは何となく、下を向いた。


