「だから、俺のシンデレラになってくれ!」



ぽかんとする晴香とあたしをそのままに、目の前の篤が力強くそう言った。


意味がわからなくて固まるあたし達の傍で、慣れてるみたいに雅也が笑う。



「出たよ。篤のぶっとび発言」


「ぶっとび発言?」


「雅也!失礼だろ、それ」



反論する篤に、雅也が小さく笑う。


さらっと揺れた黒髪を払って、雅也は身を乗り出した。



「お前、ときどき突拍子もないこと言い出すじゃん。さっきのは今年1番かもしれねぇけどさ」


「突拍子もなくないし……。俺の中ではちゃんと筋が通ってんの!」


「はいはい。で?何をどう考えたから“シンデレラ”なんだよ。お前のことだから、告白ではないんだろ?」


「告白!? 違うよ!俺がいきなりそんなこと言えるわけないだろ!?」



びっくりして目を見開く篤と笑い続ける雅也のバランスが、妙にちょうどいい気がした。



「クーポン券配ってるのを見た時に思ったんだよ。騒がしい駅前でちゃんと声が響いててさ。それがものすごく強くて、凛としてて……。
でも、どっか優しくて、柔らかい感じもして。姿勢もさ、すごく綺麗なんだよ。背筋がぴんとしてて」


「確かに、バイト中の美砂って普段と違って姿勢良くて、しっかりして見えるかも」


「やっぱりそうなんだ! しかも、笑顔の作り方がイメージ通りでさ。ベストだったんだよなぁ……」



うっとりと表情になった篤を見て、開いたままになっていた口元をぐっと引き締めた。


意味がわからない!


本当に、意味がわからない。