俺のシンデレラになってくれ!

晴香の言葉に合わせて少し視線を送ると、隣では篤と呼ばれる彼が、黙ってゆっくりとはしを動かし続けていた。


手元には、健康的なおかずがいくつか並んでる。


今日のランチセットは生姜焼きなんだ……。


自分が頼む時よりもご飯のサイズが大きいランチセットを見ると、何だか不思議な気分になる。



「あー、コイツね、考え事に夢中になると、こうやって自分の世界に入り込んじゃうんだよね。だから変人なんだけど」


「なるほど」


「こういう時は大抵、サークルのことを考えてるらしいんだけどね」


「サークル?」



首を傾げるあたしに、雅也がにっこりと微笑んだ。



「篤、演劇サークル入ってるんだよ。おーい!篤! 気持ち悪いからそろそろ戻ってこいよ!」



雅也が、正面に座る彼の目の前に手をかざした。


はじかれたみたいに顔をあげて、彼が不満そうに眉間にしわを寄せる。



「気持ち悪いってなんだよ」


「お前、何でそういう単語にだけ反応するんだよ」


「侮辱されてるんだから当たり前だろ」


「どーだか。それより、またサークルのこと考えてたんだろ? 今度は何だよ」



そう言いながら、雅也はカレーをスプーンに乗せた。


こんな会話をするのにも慣れてるのか、表情1つ、さっきまでと変化がない。


そんな雅也とは対照的に、篤ははっとした顔をしてから口を開いた。



「そうだった。あのさ、俺の……」


「俺の?」



聞き返す雅也を視界に入れないまま、彼はぱっちりした目をあたしに向けた。



「あんた、俺のシンデレラになってくれ」


「は?」