俺のシンデレラになってくれ!


お財布だけ持ってさっと歩きだした晴香を見送ってから、あたしは鞄を開けた。


バイトがなかったおかげで作れたお弁当を取り出して、何となく、壁に貼られたカラフルなチラシに視線を送る。



白い柱に貼られているのは、どれもサークルや部活なんかの宣伝ばかりだった。


クリアファイルに入れて丁寧に設置されたものから、乱雑にピンでとめられたものまでいろいろある。



……大学って、何をするところなんだったっけ?



高校生の時は、“将来のため”とか、“勉強のため”とか、簡単に答えてた。


例え年が1歳しか変わらなくても、“大学生”って肩書があるだけですごく大人な、立派な人のような気がしてた。



でも実際は、こんなにもうるさくて、がやがやしてて、……。


例えば単純に描いてた、落ち着いてたり、コーヒーをブラックで飲んじゃったりするような立派な大人像は、構内のどこを探しても見当たらない。



隣の子たちみたいにはしゃいだり、サークルだなんだって騒いだり、あたしみたいにバイトばっかりしてみたり、……。


テストの時期になるとノートをコピーし合って、焦ってオールで勉強して。


レポートも字数を超えられるようにってカサ増しの方法を考えて。



目の前に広がってる光景と体験は、高校生に誇れるようなものでは到底ないような気がした。



……まぁ、それなら何かアクションを起こしてみろって感じなんだけど。


残念ながら、あたしの頭にはそこまで考えるような容量も、気力も準備されてない。



「お待たせー! 美砂の分も、お茶もらってきたよー」