「え!?」
「1枚じゃあ、気に入った番号のものがあっても1回しか使えませんしね。どうぞ!」
「あ、あの……」
「お店を気に入っていただいているようで……ありがとうございます! ご来店、お待ちしてますね!」
何か、目の前の男の人は戸惑ってるようにも見えるけど……。
これ以上関わるのは面倒だ。
それに何よりも、寒さに耐えきれそうにないから、早く切り上げたい。
あたしは、今日1番じゃないかと思えるくらいの笑顔を作った。
ファーストフードの店員さんのスマイルはタダで買える商品じゃない。
ただのサービスだし、ただの武器だ。
「あー! ありがとうございます。じゃあ……」
こういう時に使わなきゃ、意味がない。
「ありがとうございました!」
にっこり微笑むと、男の人はまた、駅の方へ歩いて行った。
ちょっと会話は長くなったけど、これであたしのノルマは終了。
「よっし」
これ以上ここにいたら、寒さでどうにかなりそうだ。
肩にぐっと力を込めてから、あたしは急いで店のドアに手をかけた。


